パラグラフの重要性とその書き方

1998.8.26

多くの日本人は、パラグラフを意識して文章を書いていません。しかし、パラグラフはライティング上、非常に重要な意味があります。パラグラフがしっかり構成されている文章と、そうでない文章とでは、文章の質が歴然と異なります。パラグラフを意識しないで文章を書くことは、書くことに対して全く重要性を認識していないのも同然です。

 

現状の問題点

多くの日本人は、パラグラフがなんだか知りません。「かなり長いこと書いたから、そろそろ改行しようか」程度の認識の人が圧倒的です。なかには、文章の書き方について本を著している人ですら、パラグラフの書き方やその重要性を本当に認識しているのか疑わしくなります。

 

たとえば、ある本では、以下のように、段落に注意しようとまでは書いてあるものの、なぜ段落が重要で、どうのように書かなければならないのかは全く書いていません。筆者の段落に対する知識を疑わざる得ません。

『節や句の切れ目にはテン(、)を、文が終わったらマル(。)をつけることは教えられる。知らない人はいないだろう。ところが、その文を重ねてまとまったことをのべる段落という単位のことになると、急にあやふやになる。

 

段落を変えるには行を改め、一字下げるという形だけは心得ているが、内容がわかっていない。自分はこういう段落の書き方をしているという自覚がとぼしい。

 

もともと日本語には段落というものがなかった。明治になって外国語に影響されてできた、いわば輸入の形式である。どうも自信がない。はっきりした考えがあって新しい段落をおこすのではなく、なんとなく改行して気分を変えてみるか、といったあいまいな書き方をする。

 

段落の感覚が育ちにくいのは、ひとつには話している言葉にも関係がある。われわれは文をしゃべっていないで、節をならべる。・・・・・・で、・・・・・・が、・・・・・・ので、・・・・・・けれども・・・・・・、のようにえんえんとつないでいく。これでは文ははっきりしない。まして段落など思いもおよばない。こういう話し方だから、しゃべり出すととめどがなくなるのである。

 

書くときは逆で、段落の感覚がないと長い文章が書きづらい。日本語が短編の文章に適しているといわれるのも、これにかかわっている。長いものは文ではなくて、段落を積み重ねて書く。お互い段落にもう少し注意したいものだ。』

 

パラグラフとは

パラグラフとは、ある一つのトピックについて述べた文の集まり(一つの文で構成されることもある)です。全く同じトピックについて二つ以上のパラグラフが割り当てられたり、逆に、一つのパラグラフの中に、二つ以上のトピックが述べられていることはありません。つまり、パラグラフが変わるということは、トピックが変わることを意味しますし、パラグラフが変わらないなら、トピックは同じままであることを意味します。

 

パラグラフをしっかり意識して書かれた良い例(ここをクリック)を示します。各パラグラフが、それぞれ明確なトピックを持っていることに注目して下さい。

 

パラグラフの書き方

効果的なパラグラフを書くには、以下の三つのポイントを守ることが大事です。

  1. 一つのパラグラフでは一つのトピックだけを述べる。

  2. 一度述べたトピックを他のパラグラフで述べない。

  3. パラグラフの先頭には、そのパラグラフの要約文を置く。

上述の良い例(ここをクリック)は、上記のポイントがしっかり守られています。

 

パラグラフの重要性

しっかりしたパラグラフ(上述のポイントを守ったパラグラフ)で構成された文章は、以下の優れた特徴を有します。

  1. 必要な情報/不要な情報の判断が容易

  2. 重要な情報の読み落としがない

  3. 速読が可能

  4. 内容の理解が容易

  5. 筆者の考えの流れの把握が容易

しっかりしたパラグラフなら、そのパラグラフを読むべきか、読まなくて良いかの判断(これは読み手の立場により変わります)が即座に判断できます。なぜなら、パラグラフの先頭文に要約文が来ているからです。斜め読みしても、必要な情報が手に入れられるのですから、実務の文章としては理想的です。

 

しっかりしたパラグラフなら、そのパラグラフを読まないと判断しても、重要な情報を読み落とす心配がありません。なぜなら、要約文以外のトピックはそのパラグラフには書かれていないからです。

しっかりしたパラグラフなら、速読が可能です。なぜなら、各パラグラフの先頭文(=要約文)だけを読めば粗筋がわかるからです。

しっかりしたパラグラフなら、内容の理解が容易です。なぜなら、各パラグラフの先頭文でそのパラグラフで述べることが要約されていますから、パラグラフの展開が予想できるからです。展開の予想できる文章は理解しやすものです。

 

しっかりしたパラグラフなら、筆者の考えの流れを把握するのが容易です。なぜなら、各パラグラフのトピックがわかれば、あたかも視点を高くして、文章全体を上から眺めているかのように全体が見えるからです。

 

なお、最近では新聞の社説に見られるブロック・ライティング(パラグラフより小さい単位:1,2文程度で文章を構成する)は、お勧めできません。なぜなら、ブロック・ライティングは、トピックの切れ目がわからず、要約文もないので、上記のようなメリットを享受できないからです。ホワイト・スペースが増える分、読みやすくはなりますが、うわべにだまされてはいけません。

 

まとめ

以上のように、パラグラフはライティング上、非常に重要な意味があります。パラグラフがしっかり構成されている文章と、そうでない文章とでは、文章の質が歴然と異なります。パラグラフを意識しないで文章を書くことは、書くことに対して全く重要性を認識していないのも同然なのです。