実務文章と楽しみの文章との違い

2016.1.12

文章には大きく分けて、実務文章と楽しみの文章があります。実務文章と楽しみの文章とでは、目的や役割、読み手の姿勢が異なりますので、その書き方もおのずと異なります。この2つの文章を、あたかも同じであるかのようにとらえている本がありますが、そのような本はビジネスの現場では使えませんので注意してください。

実務文章と楽しみの文章では、おおむね次のような差があります。

実務文章

楽しみの文章

 目的は、効率的に情報入手すること

 目的は、内容を味わって楽しむこと

 論理性や伝達が最優先

 味わいが優先

 誰が読んでも同じ理解になる

 読み手により感じ方が変わる

実務文章では、目的が情報の効率的な伝達なので、結果や結論も、文章構成も最初に伝えます。必要な情報がどこに書いてあるかが分かるので、先を読むのです。どんな情報が書いてあるか分からない文章を読み進むほど読み手は暇ではありません。結果や結論が最後まで出てこないなら、全部を読んで、必要な情報を見つけ出すことになります。

一方、楽しみのための文章では、目的が読んで楽しむことなので、結末は隠します。先が分からないからこそ、先を読むのです。「この2人はこの後どうなるの?」と思うから、「次を読もう」となるのです。結末が最初からわかっていたら、小説を読む気にはなりません。

実務文章では、論理性や伝達が最優先されますので、パラグラフを使って書きます。パラグラフとは、1つのトピックだけを述べた文の集合体です。パラグラフを使うことで、ロジックがブロック図のように伝わります。また、パラグラフを使うことで、データや具体例で論証する習慣も身につきます。さらに、パラグラフ単位でトピックを読み飛ばせるので無駄なトピックを読み飛ばせます。 

一方、楽しみのための文章では、味わいが優先なので、パラグラフは使いません。パラグラフはロジックを使える書き方です。ロジックを伝えるわけではない楽しみのための文章で、パラグラフと言う概念を持ち込む意味はありません。それこそ、1文ごとに改行されていても問題はありません。

実務文章では、誰が読んでも同じ理解になるように、明確に書きます。10人の内、1人でも誤解する余地があるなら、その1人のために説明しなければなりません。1人でも誤解すれば、その1人のために仕事が後戻りします。

一方、楽しみのための文章では、読み手により感じ方が変わってもかまわないので、あえて曖昧に書きます。行間に含みを持たせるわけです。その含みが文章に味わいを与えるのです。すべてを明確に書くのは興ざめですし、野暮になります。

なお、実務文章と楽しみの文章については、雑誌に寄稿がありますので、より詳しく知りたい方は、こちら(←ここをクリック)をご覧ください。