発生過程の説明のポイント 文責:倉島
発生過程では、プランからメリット/デメリットが発生する過程を、ステップ・バイ・ステップで説明します。論証するところなので、立論で最も重要な箇所です。しっかりと論証するには、ロジックを分かりやすく説明することと、ロジックをデータで補強することが大事です。両方できてはじめて、ジャッジを説得できます。
■説明方法には2種類ある 発生過程の説明方法には、おおむね次の2種類があります。
■マイナス/プラスから0に向かう場合 これは、現状はマイナス/プラスの状態であり、プランを導入することで、そのマイナス/プラスの状態がなくなる場合です。マイナス/プラスがなくなるので、メリット/デメリットであるという主張です。
たとえば、原子力発電所の廃止による危険回避というメリットは、この典型例です。現状では、原子力発電所は事故の可能性という深刻なマイナス要因を持っています。これに対して、プラン(原子力発電所廃止)により、そのマイナス要因がなくなります。このマイナス要因がなくなることがメリットとなるわけです。
発生過程を述べるには、現状をスタートポイントに置きます。つまり、現状は、プランが施行されていないために、いかにマイナス/プラスであるかを、ステップ・バイ・ステップで説明します。次にプランにより、現状のマイナス/プラスがなくなるので、メリット/デメリットが発生すると述べます。
流れ:
具体例: 現状、原子力発電所は深刻な危険性をはらんでいます。原子力発電所の中には、活断層の上に建てられているものもあるので、直下型地震をもろに受ける可能性があります。その結果、原子炉の崩壊、炉心溶融、大爆発あるいは致命的な放射能漏れという危険を持っているのです。プランを導入すれば、原子力発電所そのものがなくなるのですから、必然的にこの危険はなくなります。
■0からプラス/マイナスに向かう場合 これは、現状がどうであるかに関係なく、プランを導入することが、直接的にプラス/マイナス要因を生む場合です。
たとえば、サマータイム制導入による省エネというメリットは、この典型例です。このメリットの場合、現状を説明する必要は特にありません。単に、サマータイム制を導入すると、どういう理由からエネルギー消費が減るかを説明すればよいのです。
発生過程を述べるには、プランをスタートポイントに置きます。つまり、プランをスタートに、メリット/デメリットのラベルをゴールにして、メリット/デメリット発生する手順を、ステップ・バイ・ステップで説明します。
流れ:
具体例: サマータイム制を導入すると、人が活動している時間における明るい時間が増えます。明るければ、人は照明をつけません。したがって、その分だけ省エネになります。
■データにも2種類ある ロジックができたら、次にデータでそのロジックを補強しなければなりません。ロジックがいくらしっかりしていても、データがなければ説得はできません。たとえば、先のサマータイム制による省エネの例では、照明をつけないことで、どの程度の省エネになるかのデータがなければなりません。
データには、次の2種類があります。
このうち、特に大事なのは2の「客観的な数値」です。なるべく客観的な数値のデータを引用して、立論を補強しましょう。
■意見のデータ これは、専門家の意見を紹介することで、自分たちの立論を補強するデータです。たとえば、先の原子力発電所廃止の例で、「活断層の上に建てられているものもあるので、直下型地震をもろに受ける可能性があります。」というパートを補強するために、地震研究者の次のような意見を引用するデータです。「活断層の上では、直下型地震が多発しています。」
この「意見のデータ」は、ディベート的にはあまり重視されません。ディベートでは、専門家の意見だからといって鵜呑みにするわけではないからです。あくまで、一人の専門家の意見であり、事実であるかはわからないという判断をします。したがって、述べないより効果はありますが、立論を十分に補強するほどではありません。
■数値データ これは、数値(特に統計的な数値)を示すことで、自分たちの立論を補強するデータです。たとえば、先の原子力発電所廃止の例で、「活断層の上に建てられているものもあるので、直下型地震をもろに受ける可能性があります。」というパートを補強するために、活断層上での直下型地震の頻度を、具体的な数値で示すようなデータです。
この「数値データ」は、「意見のデータ」に較べると立論を補強するのに効果的です。意見と異なり事実なので、客観性が高いためです。ただし、データの出典が中立的な機関であることが求められます。 |