はじめに

 

 本書の目的は、ビジネスにおける生産性を向上させるために、「読み手に負担をかけないビジネス文章」を書く能力の習得を手助けすることです。ここでいう「読み手に負担をかけない」とは、

  • 読み手になるべく文章を読ませずに、それでいて必要な情報を伝達でき、

  • 一読で内容を誤解なく理解してもらえる

ことを意味します。また、「ビジネス文章」とは、ビジネスの世界で読み書きされる文章すべてを意味します。具体的には報告書、論文、提案書、議事録、説明文、意見文、マニュアル、ビジネスレター、特許、通知文などです。

 

 読み手に負担をかけない文章を書くためには、論理的に文章やパラグラフを構成して、自分の考えをどうまとめ、どう構成すれば効果的に伝達できるかに最大の注意を払わなければなりません。なぜなら、論理的に文章を構成すれば、文章全体のレベルで、読み手の負担を軽減できるからです。その効果は絶大です。一方、語句の選択や使い方に気をつけても、文レベルでしか読み手の負担を軽減できません。その負担軽減は微々たるものです。

 

 しかし、山ほどある「ビジネス文章の書き方」に関するノウハウ書の中で、自分の考えをどうまとめ、どう構成すれば効果的かについて解説したものはほとんどありません。語句の選択や使い方を解説したものばかりです。これでは、正しい日本語を書く能力は養えても、ビジネスの生産性を向上させる文章を書く能力は養えません

 

 そこで、本書ではいかに文章を構成すべきか、いかにパラグラフを構成すべきかに最大の焦点をあてています。本書を読めば、読み手に負担をかけない文章を書くための文章構成やパラグラフ構成を知ることができます。また、演習的要素も多く盛り込んでいますので、読み手に負担のかからない文章を書く能力が養えます。

 

 本書では、なぜその文書構成やパラグラフ構成が読み手の負担を減らすことができるのかも詳しく説明しています。「なぜか?」を知れば、そう書けばどれだけ効果的なのかがわかります。逆に、そう書かなくてもよい例外を自分で判断できます。どう書くかを個条書き的に丸暗記するより、ずっと身につき、応用がきくのです。

 

 また、本書では、書き手が考慮すべきポイントを重要な七項目に絞りこんでいます。ポイントを絞ることで、必要最低限の能力を効率よく身につけることができます。つまり満点の文章を狙って詰め込むあまり、落第してしまう危険を避け、合格点を確実にとれることを目標としています。

 

 本書は、基礎編、理論編、実践編の三編で構成されています。

 基礎編では、ビジネスにおいては、なぜ「読み手になるべく文章を読ませずに、それでいて必要な情報を伝達でき、一読で内容を誤解なく理解してもらえる」文章が重要なのかについて説明しています。また、そのような文章を書くための基本的な考え方について説明しています。

 

 理論編では、読み手に負担をかけない文章を書くために考慮すべき七つのポイントを説明しています。ここでは、なぜそのような書き方をすると読み手の負担を軽減できるかについても詳しく説明しています。理論の理解が目的なので、説明には誰もが容易に内容を理解できる日常的な文章を多く用いています。

 

 実践編では、理論編で学んだ技術の応用のしかたついて説明しています。ここでは、演習問題をとおして、効果的なビジネス文章の作成方法を説明しています。ビジネス文章作成が目的なので、説明にはビジネスで使われるような文章を用いています。

 

 本書では、本書の内容そのものが、「読み手になるべく文章を読ませずに、それでいて必要な情報を伝達でき、一読で誤解なく理解してもらえる」ように書かれています。したがって、不要と思われる部分は読み飛ばしていただいても結構です。読み飛ばしても、重要な情報は漏れなく伝わるように書かれています。

 

 なお、本書で引用させていただいた文章は、ビジネス文章としてみたとき、改善の余地があるというのにすぎません。内容や主張に問題があるわけではありません。また、ビジネス文章としてではなく、楽しみの文章としてみれば問題のないものもあります。何ら他意のないことをご了承願います。

 

 本書を読めば、「読み手に負担をかけないビジネス文章」を書く能力が習得でき、ビジネスの生産性を向上できるものと確信しています。