好例1

2000.6.8

社会人ディベートにおける最適な論題

 

 多くの社会人にとって、ディベートの最大の目的は論理的思考能力と議論能力の向上です。これらの能力を向上させるには政策論題が適当です。一方で、社会人はディベートにそう長い時間を割けません。したがって、調査量が議論の質を大きく左右しないことも、論題を決めるときには考慮すべきです。

 

 ディベートによる多くの学習効果の中で、社会人が最も関心を寄せるのが論理的思考能力と議論能力の向上です。社会人にとって、論理的思考能力と議論能力は必要不可欠なスキルです。しかし、従来の日本の教育では、これらの能力を十分に鍛えることはできませんでした。したがって、これらの能力を向上させたいと、多くの社会人が望んでいるのです。

 

 論理的思考能力と議論能力を向上させるには、政策の是非について論じる政策論題が適切です。なぜなら、政策論題では、『メリット/デメリットが発生するか?』と『メリット/デメリットが、なぜ、どれだけ重要か?』に論点が絞られているからです。さらに、その論点が論理的に検証しやすいからです。論点が絞られていて論理的に検証しやすければ、議論をかみ合わせることが容易になります。このかみあった論理的検証を通じて、論理的思考能力と議論能力が養われるのです。

 

 対照的に、価値を問う価値論題や事実の有無を問う事実論題は、論理的思考能力と議論能力を向上させるには不適切です。なぜなら、これらの論題では、論点が多岐にわたるうえ、その論点が論理的に検証しにくいことが多いためです。論理的に検証しにくい論点が多くあると、議論をかみ合わせるのは困難になります。

 

 一方、多くの社会人は、ディベートにわずかな時間しか割けません。企業研修であれば、長くて一泊二日でしょう。サークルなどでディベートを楽しんでいる社会人でも、多くの場合、月に数時間程度です。

 

 準備時間が十分にとれないのですから、調査量が議論の質を大きく左右しない論題であることも大事です。なぜなら、調査量で勝敗が決まってしまうようなディベートでは、論理的思考能力と議論能力の向上は望めないからです。どちらがより有効なデータを出したかではなく、どちらがより論理的に相手の主張を検証したかで勝敗を競えば、論理的思考能力と議論能力の向上に役立ちます

 

 以上から、社会人に適切な論題は、調査量が議論を大きく左右しない政策論題ということになります。具体例として、「日本は選択的夫婦別姓を導入すべし」や「中学生のボランティア活動を内申書で評価すべし」などが挙げられます。一方、不適切な論題としては、「ペットは幸せか」のような価値論題や、「日本は死刑制度を廃止すべし」や「日本は原子力発電所を廃止すべし」のように、膨大な調査を必要とする論題が挙げられます。

 

 

 主に、次の点に注意してみてください。

  • 総論どおりに各論が展開されている

  • 各パラグラフが明確な目的を持っている

  • 各パラグラフの先頭に要約文がある

  • 既知から未知への流れが守られている

  • 1文では1つのことしか述べていない