ディベートQ&A

文責:倉島

 

よくある(ありそうな)質問とその回答集(Frequently Aked Questions: FAQ)です。ここに載っていない質問は、kurashima@logicalskill.co.jpまでどうぞ。

 

ディベート未経験者編

Q ディベートは実社会でどういうことに役立ちますか?

A 一般に以下の点で役立つといわれています。

  • 積極的に傾聴する能力が養われる。

  • 論理的に物事を考える能力が養われる。

  • 自分の意見を効果的に人に伝える能力が養われる。

  • 対立する側に立って、物事を考える習慣がつく。

 

Q 簡単に言うと、ディベートと一般の議論とは何が違いますか?

A ディベートは一定のルールにのっとって行われるので、言ってみれば、一般の議論がケンカの殴り合いなら、ディベートはボクシングといえます。また、一般の議論は相手を説き伏せるのが目的ですが、ディベートはジャッジ(第三者)を説得するのが目的となります。

 

Q ディベートでは、なぜ、自分の本来の意見と違う立場に立たねばならない(ことがある)のですか?

A 肯定/否定の両面から物事を見る目を養うのもディベートの目的の一つだからです。また、ディベートは論理性を競うためにある論題を採用しているのであり、論理性を競うことと、論題に対して個人的にどう思うかは別問題といえるでしょう。

 

Q ディベートをやると、理屈っぽくなりませんか?

A ディベートを職業とする人でも、理屈っぽくなることはありません。ディベートは、論理がないものに論理をつけようとするものではなく、ある論理を補強したり、崩したりするものだからです。つまり、何にでも理論を持ち込んで理屈っぽくなることはありません。

 

 

初級ディベーター編

Q 証拠の提出はいつまで許されますか?

A 一般には第一反駁まで。ただし、ディベートにより異なるので、試合前に確認したほうがよいです。

 

Q プレゼンテーション技術は審査の対象になりますか?

A アカデミック・ディベートでは、審査対象にはなりません。なぜなら、ディベートはどちらがより論理的であったかを競うものだからです。ただし、プレゼンテーションが下手なために、ジャッジが聞き取れなければ、当然審査に影響してきます。

 

Q 尋問がうまくできません。どうしたらうまい尋問ができるでしょう?

A 尋問の目的は、不明な点を明確にすることと、相手から有利な情報を引き出すことです。まず不明な点を明らかにして、時間があれば有利な情報を引き出すよう相手を誘導するのがよいでしょう。

 

不明な点を明確にするためには以下のような尋問が考えられます。

  • 『メリットのラベルだけもう一度言ってください。』

  • 『メリットの1番目の発生過程をもう一度お願いします。』

相手から有利な情報を引き出すときには、なるべくyes/noで答えられる質問をして、自分が有利になるように誘導します。

  • 『〜とおっしゃいましたが、それを裏づける具体的なデータをお持ちですか?』

  • 『〜な人もいるということをお認めになりますね?』

 

Q よくジャッジに「議論がかみ合ってない」といわれます。かみ合った議論をするにはどのような点に気をつければよいでしょう。

A かみ合わない議論は初心者のディベートではよくあることです。議論がかみ合うためには、肯定側/否定側の双方が、かみ合わせるための努力をしなければなりません。以下の点に気をつけてください。

 

1.肯定側は論題の趣旨を十分検討し、論題を支持する立論をたてる。(立証責任)

論題があいまいな場合に、肯定側の立論が論題を支持していないことがあります。論題を十分検討してから、立論をたてましょう。

2.否定側は、肯定側の立論の誤りを指摘し、それを証明する。(反証責任)

否定側立論で、肯定側立論の誤りを指摘し、論点を絞り込むことが、議論をかみ合わせる実質的第一歩です。用意してきた主張だけを述べたのでは、論点が発散し、ディベートになりません。準備してきた内容の9割りは捨てる覚悟が必要です。

3.反駁では、肯定側/否定側ともに、相手の主張のどこが間違っているかを指摘する。

 

 

上級ディベーター編

Q 第一反駁で反論せず、第二反駁で反論した議論はどうジャッジされますか?

A ディベートでは反論のあった議論は、すぐ次にまた反論しなければ、受けた反論を認めたことになります。したがって、第二反駁だけでの反論は、遅すぎた反論として無視されます。つまり、反論はなかったものとして扱われるため、その議論は認められたものと見なされます。

 

Q 否定側第一反駁では、否定側が立論で述べたことを再度サポートしなければなりませんか?

A 必ずしも述べる必要はありません。なぜなら、ディベートのフロー上、否定側第一反駁の段階では、否定側の立論が、まだ肯定側により反論されていないからです。

 

 

ジャッジ編

Q ディベートではどんなにおかしな議論でも、反論がない場合は生きていると取らねばならないのでしょうか?

A これは、ジャッジの姿勢によります。自己の意見を完全に無にして行われた議論だけで判定する姿勢を取れば、いかにおかしな議論でもあっても、反論がなければ生きているととります。一方、常識的な判断基準は持ち込んでもよいとする姿勢を取れば、おかしな議論は、反論がなくてもジャッジによって切り捨てられます。

 

Q 立論だけで、以後何も触れられなかった議論はどうジャッジされるのでしょう?

A 論拠を伴っていて、立証責任が果たされているなら、そのまま有効と取るのが普通です。しかし、『消えた』議論として、ジャッジには反映されません。つまり、述べられなかったものとして扱うこともありますので、反論がなくても、一度は反駁で触れておいた方がよいでしょう。

 

Q ジャッジをするにあたって気をつけなければならないことは何ですか?

A 以下の点に気をつけてください。

  • 論題への偏見を捨てる。

  • ディベーターへの個人的感情を捨てる。

  • プレゼンテーション能力を判定の根拠に持ち込まない。

  • 判定しようとする試合の内容だけを根拠とする。

    • 他の試合と比較しない。

    • 自分の知識を持ち込まない。

  • ルール違反に厳しく対処する。特に、反駁でのニューアギュメントは無視する。

  • 判定の基準を述べる。

Q 議論が拮抗して、甲乙つけ難い場合は引き分けとジャッジしてもよいですか? 

A ディベートに引き分けはありません。甲乙つけ難い場合は、否定側の勝ちとなります。なぜなら、メリットとデメリットが均衡して、肯定側プランを採用してもしなくても同じということですから、あえて現状を変える積極的な理由がないということになるからです。